カッコーの巣の上で
原題 : One Flew Over The Cuckoo's Nest
監督:ミロス・フォアマン
製作:ソウル・ゼインツ、マイケル・ダグラス
原作:ケン・ケーシー
脚本:ローレンス・ホウベン、ボー・ゴールドマン
撮影:ハスケル・ウェクスラー
音楽:ジャック・ニッチェ
製作年 : 1975年
製作国 : アメリカ
出演:ジャック・ニコルソン 、ルイーズ・フレッチャー 、ウィリアム・レッドフィールド 、マイケル・ベリマン 、 ピーター・ブロッコ 、ダニー・デヴィート
原作はケン・キージーが、カリフォルニアの現役軍人病院で働いた経験をもとに書いたベストセラー小説。ヴェトナム戦争さなかに反体制文化を支持する若者たちの愛読書だったそうです。製作にはマイケル・ダグラスの名前があります。父親カーク・ダグラスが何年も抱えていた企画を息子が映画化しオスカーを獲得しました。
州立の精神病院にある日、マクマーフィ(ジャック・ニコルソン)という38歳の男が、刑務所の労働農場から連れてこられました。前科5犯、いずれも暴行罪で捕まっています。送られてきた理由は、好戦的で許可なくしゃべる、労働をしたがらない怠け者である・・・というもの。彼の精神状態が本当に異常かどうかの鑑定を行なうという目的もありました。強制労働逃れの仮病ではないかと疑われたからです。マクマーフィはワイセツな言葉を使い、ニヤニヤするだけで、この男がほんとうに異常なのか、それとも何か企みがあるのか、映画を観ただけでは判断しかねます。
マクマーフィ曰く「オレは正常だ!野菜みたいにじっとしてなきゃ異常者なのか!」しかし、それを額面どおりには受け取れません。彼には得体の知れぬ、観客の注意をはぐらかす反磁力のようなものがあるからです。いったい、何が起こるのだろう?という思いが次第に膨らみ、やがてマクマーフィの奇抜な言動を期待する気持に変わってきます。が、大声で怒鳴ったり、時には暴力的になることはあっても、軌道を逸しているとは思えない。マクマーフィはストレート過ぎるだけで、人間味あふれる男では・・・?と思えてくるところがフォアマンの演出の妙でしょうね。観客は知らず知らずのうちに、マクマーフィと同体化し始めているのです。
管理された社会の中では、権威を持つものに服従することが求められます。そこには自由はありません。人間としての最低限の権利さえ主張することは許されないのです。威圧的な婦長(ルイーズ・フレッチャー)に押さえつけられ、羊のように従順な患者たち。一人一人が個性的なだけに、彼らが哀れでなりません。この非人間的な病院内の秩序に対し、マクマーフィは小さな反乱を起こします。権利と自由の主張。なにも入院患者の待遇改善などという大げさなものではなく、テレビでワールド・シリーズを見ることを提案しただけ。しかし次にマクマーフィがとった行動は大胆なものでした。患者たちをバスの乗せて、病院の外へ連れ出したのです。そしてチャーターした船で海へ漕ぎ出し、ひと時の自由を楽しみます。
こうした行為に危機感を抱いた病院側は、彼を正常だが危険な人物と結論付け、労働農場へ戻そうとします。これに異を唱えたのが婦長でした。「自分たちの問題を他に譲るのではなく、彼をここに置いて力になるべき」だと・・・・なんたる欺瞞!思うに、このまま病院の外に出す事は、自身の敗北になると考えたのでしょうね。強者の独りよがりの論理ほど腹立たしいものはありません。マクマーフィは正常であるとの医者の判断にもかかわらず、狂人として病院へ留め置かれることになります。
マクマーフィの反乱はその後も続き、患者たちの意識も徐々に変化し始めた頃、患者の一人が、卑劣な婦長の仕打ちが原因で自殺してしまいます。怒り心頭のマクマーフィは婦長の首に手をかけ・・・・・・危険人物のレッテルを貼られた彼はロボトミー手術を施され、廃人として横たわるしかありませんでした。何を以って異常とするのか?人間の尊厳とは何か?自由とは何か?最後まで自由な魂を失うことなく、体制にたてついたマクマーフィの遺志はチーフ(ウィル・サンプソン)に継がれます。渾身の力をふりしぼって持ち上げた洗面台で窓を破り、闇の中へと消えていったチーフに、自由を託した気持ちになりました。
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ジャック・ニコルソンの館
【作品INDEX】
リトル・ショップ・オブ・ホラーズ(60)
忍者と悪女(63)
古城の亡霊(63)
旋風の中に馬を進めろ(66)
銃撃(66)
爆走!ヘルズ・エンジェルス(67)
聖バレンタインの虐殺/マシンガン・シティ(67)
白昼の幻想(67)
ジャック・ニコルソンの嵐の青春(68)
イージー・ライダー(69)
晴れた日に永遠が見える(70)
ファイブ・イージー・ピーセス(70)
愛の狩人(71)
キング・オブ・マーヴィン・ガーデン(72)
さらば冬のかもめ(73)
チャイナタウン(74)
さすらいの二人(75)
Tommy/トミー(75)
おかしなレディ・キラー(75)
カッコーの巣の上で(75)
ミズーリ・ブレイク(76)
ラスト・タイクーン(76)
ゴーイング・サウス(78)
シャイニング(80)
郵便配達は二度ベルを鳴らす(81)
レッズ(81)
ボーダー(81)
愛と追憶の日々(83)
女と男の名誉(85)
心みだれて(86)
イーストウィックの魔女たち(87)
ブロードキャスト・ニュース(87)
黄昏に燃えて(87)
バットマン(89)
黄昏のチャイナタウン(90)
お気にめすまま(92)
ア・フュー・グッドメン(92)
ホッファ(92)
ウルフ(94)
クロッシング・ガード(95)
マーズ・アタック!(96)
ブラッド&ワイン(96)
夕べの星(96)
恋愛小説家(97)
プレッジ(01)
くたばれ!ハリウッド(02)
アバウト・シュミット(02)
N.Y.式ハッピー・セラピー(03)
恋愛適齢期(03)
ディパーテッド(06)
最高の人生の見つけ方(08)
幸せの始まりは(10)
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