ホッファ

原題：HOFFA
監督： ダニー・デヴィート
製作： エドワード・Ｒ・プレスマン、ダニー・デヴィート、カルデコット・チューブ
共同製作：ハロルド・シュナイダー
製作総指揮： ジョゼフ・イシグロ
脚本： デヴィッド・マメット
撮影： スティーヴン・Ｈ・ブラム
編集：リンジー・キリングマン、ＡＣＥ.ロナルド・ルーズ
音楽： デヴィッド・ニューマン
上映時間 100分 　1992年/アメリカ映画
出演： ジャック・ニコルソン、ダニー・デヴィート、アーマンド・アサンテ、Ｊ・Ｔ・ウォルシュ、ジョン・Ｃ・ライリー、フランク・ホエーリー、ケヴィン・アンダーソン、ジョン・Ｐ・ライアン、ロバート・プロスキー、ナタリア・ノグリッチ、ニコラス・プライヤー

映画の冒頭、ホッファ役のジャック・ニコルソンの顔にまず、驚いた。ジャックのような、そうでないような・・・・。巧みなメイクとノーズピースで顔が変わっている。気のせいか、髪の量が増えているようにも感じられる（笑）。

しばらくして、ホッファの若いころへと場面は変わる。大不況のさなかの３０年代。トラック運転手のチャロ（ダニー・デヴィート）の車に乗りこむホッファ（ジャック・ニコルソン）。「人間は正当な権利を主張していいんだ。非稼働時間の給与、医療保険、みんな正当な要求だ。団結して要求すれば手に入る。」と、組合結成の必要性をチャロに説く。これがホッファと、後に彼の側近となったチャロとの出会いだった。

監督はチャロ役として映画にも出演しているダニー・デヴィート。彼の映画デビューは「カッコーの巣の上で」。ジャックとの共演はこの他「ゴーイング・サウス」、「愛と追憶の日々」がある。ふたりともニュージャージー出身ということもあってか、親しい間柄だったようだ。そうそう、「バットマン」シリーズで悪役を演じたという共通点もある。

さて、ジェームズ・Ｒ・ホッファとは。
３０年代の不況時代に全米トラック運転手組合を組織し、会長にまでなった実在の人物で、１９７５年７月３０日に自宅を出たきり消息を絶っている。何らかの事件に巻き込まれたと思われるが、解決をみていない。この事実を元に、デヴィッド・マメットがサスペンス色の強い脚本に仕上げた。映画は組合結成初期の頃から、やがてホッファがアメリカの名士となり、組合員の裏切りによって命を落とすまでの４０年間を描いている。ホッファの遺体を乗せたトラックがどこかへ走り去るという皮肉な幕切れ・・・・。トラックで活路を開いた男の人生はトラックで閉じた。



組合で思い出した。半年前くらいに米映画俳優組合と制作者側の契約更改交渉が暗礁に乗り上げたというニュースが流れた。ストも辞さない構えの強硬派としてジャック・ニコルソンとショーン・ペンの名前が挙がっていたっけ・・・・。映画とダブる。本作においてジャックは迫力の演技を見せているが、地の部分もあったのではなかろうか。



ホッファは強力なリーダーシップを発揮し、組合員の信頼を得、着実にその地位を固めていった。彼の功績は全国の労働者を中産階級に押し上げたことだろう。しかし、そこに至るまでにはアクドイことも行った。マフィアとの癒着、組合資金をめぐる黒い霧・・・はたして彼は労働者階級の英雄か、それとも欲にまみれた悪党なのか。ホッファは「俺はただの１ドルも年金積立から利益を受けていない。」と凄むが、年収はケネディ大統領より高い金額を受け取り、自分に不利益をもたらす者は手段を選ばず排除もした。悪党ではあるけれど、人を惹きつけてやまない魅力を持った人物だったのかもしれない。クセのある過激な役柄はお手のもののジャック・ニコルソンが彼らしいホッファを演じている。