アバウト・シュミット

原題：ABOUT SCHMIDT
監督： アレクサンダー・ペイン
原作： ルイス・ベグリー
脚本： アレクサンダー・ペイン 、ジム・テイラー
撮影： ジェームズ・グレノン
編集： ケヴィン・テント
音楽： ロルフ・ケント
上映時間：１２５分
２００２年/アメリカ映画
出演：ジャック・ニコルソン キャシー・ベイツ ホープ・デイヴィス ダーモット・マローニー ハワード・ヘッセマン レン・キャリオー

タイトルを直訳しますと「シュミットについて」。はい、主人公はシュミットさん。まずは経歴をご紹介いたしましょう（笑）。現在６６歳、定年退職したばかりで無職。（アメリカの企業の定年は６５歳なのかしら？）

現住所：ネブラスカ州オマハ
家族：専業主婦の妻、コンピューター関連の仕事に就いている娘（別居）。バージニア州に糖尿病を患う兄あり。
学歴：カンザス大学卒
結婚歴：１回（４２年間の結婚生活を継続中）　
職歴：保険会社ウッドメンに３２年間勤務。最終肩書きは部長代理。職務は保険経理。



会社のために働き、平穏な家庭を築き、親交を深める友人もいる。満足のいく働きをし、栄光のうちに引退、お金ではない真の豊かさを求めて第二の人生のスタートを切った・・・。となれば良かったのだが。

シュミットさん、何をしていいのかわからない。いきなり妻と二人だけの生活になったのだから。妻を見て思う。「私の家に住んでいるバアさんは何者だ」そうなると、妻のすること全てがイラつく。遠く離れて住む娘の存在だけが生き甲斐なのに、その娘はバカ者風男と結婚する予定。退職した会社に顔を出してみれば、後任の若造に邪険にされる。それでもシュミットは感情の起伏を見せず、静かに新しい生活を受け入れようとする。

ところが、とんでもない悲劇が起こった。妻が脳梗塞で死んでしまったのだ。Oh my God！うろたえるシュミット。妻の洋服の匂いをかぎ、妻の香水をふりかけ、妻のクレンジングクリームを自分の顔に塗りたくる。そんなふうにして妻を偲ぶ姿が痛々しい。



さらに不幸は続く。遺品の手紙から、貞淑と思っていた妻は、シュミットの親友と不倫関係にあったことが判明する。３０年も前の事ではあるけれど、シュミットは二人の裏切りが許せない。こうして彼は、仕事と妻に続き、友まで失なってしまった。最後の砦は最愛の娘だ。結婚式の準備に追われる娘に会おうと、キャンピングカーに乗り込みデンバーを目指す。



着いた先には強烈な個性を持つ婚約者の家族たちがいた。中でも母親のロバータ（キャシー・ベイツ）は下品の権化のような女で、シュミットの前に素っ裸で現れたりする（汗）。娘に結婚を止めてくれと懇願しても相手にされず、とうとう迎えてしまった結婚式。



心の内とは裏腹に、にこやかな表情で披露宴に出席し、花婿とその家族へ謝辞を述べるシュミットは、分別のある人なのだろうが、哀れで気の毒だ。因果応報と言うけれど、これほどツキに見放されてしまう要因が彼にあるとは思えない。旅から戻ったシュミットは、苦悩と疎外感におそわれ、泣き出してしまう。きっと、この涙が、辛い気持ちを流してくれると思う。さぁ、ここからが、第二の人生だ！ジャックはシュミットの細かな感情の動きを几帳面にすくい上げ、抑圧された不安定な心を巧妙に表現している。