郵便配達は二度ベルを鳴らす

作品情報


原題 : The Postman Always Rings Twice
監督：ボブ・ラフェルソン
製作総指揮：アンドリュー・ブローンズバーグ
原作：ジェームズ・Ｍ・ケイン
脚色：デイヴィッド・マメット
撮影：スヴェン・ニクヴィスト
音楽：マイケル・スモール
美術：ジョージ・ジェンキンス
編集：グレイム・クリフォード
１９８１年/アメリカ映画
出演： ジャック・ニコルソン、ジェシカ・ラング、ジョン・コリコス、マイケル・ラーナー 、ジョン・Ｐ・ライアン、アンジェリカ・ヒューストン

時はアメリカ大恐慌時代。前科者のフランク・チェンバース(ジャック・ニコルソン)は、ヒッチハイクで旅をする流れ者。ハイウェイ沿いにあるドライブインで修理工として雇われたフランクは、店主の美しい妻コーラ(ジェシカ・ラング)と恋に落ちます。フランクとコーラが出会いさえしなければ、二人は情欲に燃えて悲劇の坂道を転がり落ちてく行くこともなく、それなりの人生を歩んだはずでした。コーラは夫に隠れて情事を重ねるうち、彼を殺さなければ二人は結ばれないと妄想し始めます。自分の不幸の根源はギリシャ人の夫にあると思っていたのかもしれません。フランクは行く先々で犯罪を重ねてきた男。それでもコーラにとっては、今の不遇から救い出してくれる頼もしい相手と思ってしまったのでしょう。「私はあなたのものよ。もし、私たちだけなら、もし、二人きりなら・・・・。」



不倫愛の行き着いた先の殺人。自動車事故を装った犯行は成功したものの、店主にかけられていた保険金に疑惑の目が向けられ、二人は逮捕されてしまいます。しかし、フランクもコーラも保険金の事は知りませんでした。窮地に陥ったふたりを、切れ者の弁護士が救い、保険金はその報酬へと化しました。

自由の身になったふたりですが、その関係は裁判の前と後で微妙な変化を生じていました。互いに相手への不信感を払拭できない・・・・フランクは保険金目当ての殺人に自分は利用されたのかもしれないと思い、ローラはフランクが司法取引をして自分だけに罪をなすりつけようとしたかもしれないと思ったのです。無罪判決を勝ち得たといっても、ふたりが破滅の泥底にいることに変わりはありません。憎悪と愛情の間で苦しむふたりでした。



事件を知る人々が店に押し寄せ、接客に忙殺される日々が空しく過ぎるだけで、ふたりの心の溝は埋まりません。そんな時、コーラの母が倒れたという知らせが入り、彼女はしばらくの間、故郷へ帰ることになります。離れて会えない時間が自分を見つめ直す余裕を与えたのか、コーラはフランクへの愛を再認識し、フランクもまたコーラに思いを馳せるのでした。子どもを欲しがるコーラにフランクは結婚を申し込みます。

しかし、犯した罪の上に成り立っていた幸せは突然の終わりを迎えます。子供を身ごもったコーラでしたが、突然の自動車事故で命を落とします。泣き崩れるフランクに近づくパトカーのサンレンの音。彼がコーラ殺害容疑で逮捕されることを暗示するラスト。店主を殺した罪としてコーラには死が、フランクには冤罪での逮捕が用意されていました。これが男と女の情欲の結末です。