愛の狩人

原題：CARNAL KNOWLEDGE
監督： マイク・ニコルズ
製作： マイク・ニコルズ
製作総指揮： ジョセフ・Ｅ・レヴィン
脚本： ジュールス・ファイファー
撮影： ジュゼッペ・ロトゥンノ
上映時間 97分　1971年/アメリカ映画
出演： ジャック・ニコルソン 、キャンディス・バーゲン、アーサー・ガーファンクル、アン＝マーグレット、リタ・モレノ、シンシア・オニール、キャロル・ケイン、ケヴィン・ドブソン

映画は、ある大学の寮で青春を過ごす二人の青年の会話で始まる。ジョナサン（ジャック・ニコルソン）とサンディ（アーサー・ガーファンクル）はルームメイトであり親友だ。サンディは愛情や人生について青年らしい素朴な夢を持っているロマンティックな青年であり、ジョナサンはそれらにいかなる幻想も持たないニヒリストである。優等生とアウトサイダーともいえる二人の青年が、人生について、愛について、性についてどのように考え、どんな女性と巡り合い、彼らがどのように変わっていくのかを、女たちとの肉体関係をとおして描かれていく。監督のマイク・ニコルズは、人間の存在を支配するもっとも強力な力である、性の衝動そのものに鋭い切り込みを入れている。その正体へ肉薄していくことによって、男という存在に潜む真実を浮き彫りにした。



ある夜のこと。サンディは、女子大のパーティで知り合ったスーザン（キャンディス・バーゲン）に夢中になってしまう。これを聞いたジョナサンもまた、彼女に興味をそそられ、こともあろうことか肉体関係をもつ。その後サンディもスーザンと関係を結んだため、三人の男女は三角関係に陥ってしまう。しかし、スーザンは誠実なサンディを選びジョナサンとの関係を断ち切る。

それから数年が過ぎた。ジョナサンは税理士に、サンディは医者になり、おのおの経済的には恵まれた生活を送っている。しかし、家庭生活においては、二人には大きな違いが生じていた。サンディが学生時代の美しいガール・フレンドを妻とし幸せな家庭を築いているのに対し、ジョナサンは家庭や結婚になんの期待も持たず未だ独身であった。彼は次々と情事の相手を求めることによってしか充足感を味わうこたが出来ない孤独な男になっていた。そんなジョナサンをサンディは痛ましさをこめて見つめていたが、同時に自分の生活とは逆の彼を羨ましくも思っている。

やがてサンディは、今までの型にはまった生活から脱し、若い自由な女性とつきあったりもするようになる。一方のジョナサンはＣＭ女優のボビー（アン＝マーグレット）をお相手に選んでいたが、それは肉体を通しての快楽以上のなにものでもない。彼はボビーと同棲するも、結局は彼女の気持ちを無視し見捨てる。その後も絶え間なく女遊びを繰り返し、自分の過去の女性遍歴をカラー・スライドに記録したりしていた。そのジョナサンが性的不能者になってしまう。ラストで娼婦の愛撫を受けながら、自分の若かりし頃へと思いを馳せるシーンが痛ましい。