白昼の幻想
作品情報
原題:The Trip
監督:ロジャー・コーマン
脚本:ジャック・ニコルソン
撮影:アーチ・R・ダルゼン
音楽演奏:アメリカン・ミュージック・バンド
衣装デザイン:リチャード・ブルーノ
上映時間:85分
1967年/アメリカ映画
出演:ピーター・フォンダ、スーザン・ストラスバーグ、ブルース・ダーン、デニス・ホッパー
ジャック・ニコルソンが脚本を書いたサイケデリック熱とLSDを扱った映画。本人は出演も望んでいたそうですが、監督のロジャー・コーマンは彼ををキャスティングしませんでした。それでもジャックは現場に顔を出して小道具や装飾品を細かく確認したそうです。3週間のスケジュールで予算は30万ドル、予算がなかったため象徴的な画をつなげ、イメージを演出しています。万華鏡的な幻覚シーンは特殊効果の合成技術と撮影技術の結晶と言えましょう。
ピーター・フォンダ演じるCM作家ポールは妻(スーザン・ストラスバーグ)との離婚問題を抱え、不安定な精神状態に陥っています。自分の心を知るため、自己洞察を目的にLSDを試してみることに・・・・。LSDを使用すると、時にバッドトリップと呼ばれる幻想が現れることがあり、人に危害を加えたり、自殺する恐れがあるため、そばで見守りサポートする人が必要だそうです。このサポート役にはブルース・ダーンが選ばれました。これはジャックが自分が演じることを想定して脚本に加えた人物です。ブルースは幻覚の世界で、幻覚に共鳴しつつ、理性の声として現れます。
ポールはさまざまな幻覚を見ます。万華鏡模様、光の点滅、海辺の風景、オレンジ色の光の雲・・・・すべてに命を感じる、あらゆるエネルギーの流れを感じる、自分の手の中に太陽がある・・・・・初めて味わう感覚。これだけでしたら、LSD賛美の映画として世間の批判を浴びたのでしょうが、幻想的なトリップの後にはバッドトリップが大きく口を開けて待ち構えていました。何者かに襲われ逃げ惑うポール、死んで埋葬されている自分、ジョンの死体、太陽の光が降り注ぐ砂漠、血の涙・・・・。恐怖の正体はポールの心が生んだ幻影なのでしょうか。
迷い込んだ家のテレビが伝えます。サイゴン北部で3時間に及ぶ戦闘があり、アメリカ兵31名と敵兵196名が死亡。アメリカ兵600名のうち113名が負傷・・・・と。当時の若者たちを中心に行われた反戦運動は体制への反抗心の表れでした。若者の心を掴んだのは体制主義に固まったメジャー映画よりも、こうした実験的な作品だったのかもしれません。
ポールはトリップをしているあいだに象徴的な死と再生を経験し、妻を愛していることに気付きます。「探しものは見つかった?自分の心が」「どうやら僕は君を愛している」「今はそうでも、明日になったら?」また明日、考えればいいさ」・・・・・・そしてラスト、ポールの静止画が砕けるシーンでトリップは幕を閉じます。
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ジャック・ニコルソンの館
【作品INDEX】
リトル・ショップ・オブ・ホラーズ(60)
忍者と悪女(63)
古城の亡霊(63)
旋風の中に馬を進めろ(66)
銃撃(66)
爆走!ヘルズ・エンジェルス(67)
聖バレンタインの虐殺/マシンガン・シティ(67)
白昼の幻想(67)
ジャック・ニコルソンの嵐の青春(68)
イージー・ライダー(69)
晴れた日に永遠が見える(70)
ファイブ・イージー・ピーセス(70)
愛の狩人(71)
キング・オブ・マーヴィン・ガーデン(72)
さらば冬のかもめ(73)
チャイナタウン(74)
さすらいの二人(75)
Tommy/トミー(75)
おかしなレディ・キラー(75)
カッコーの巣の上で(75)
ミズーリ・ブレイク(76)
ゴーイング・サウス(78)
シャイニング(80)
郵便配達は二度ベルを鳴らす(81)
レッズ(81)
ボーダーー(81)
愛と追憶の日々(83)
女と男の名誉(85)
心みだれて(86)
イーストウィックの魔女たち(87)
ブロードキャスト・ニュース(87)
黄昏に燃えて(87)
バットマン(89)
黄昏のチャイナタウン(90)
お気にめすまま(92)
ア・フュー・グッドメン(92)
ホッファ(92)
ウルフ(94)
クロッシング・ガード(95)
マーズ・アタック!(96)
ブラッド&ワイン(96)
夕べの星(96)
恋愛小説家(97)
プレッジ(01)
くたばれ!ハリウッド(02)
アバウト・シュミット(02)
N.Y.式ハッピー・セラピー(03)
恋愛適齢期(03)
ディパーテッド(06)
最高の人生の見つけ方(08)
幸せの始まりは(10)
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