シャイニング

原題：THE SHINING
製作：スタンリー・キューブリック
監督：スタンリー・キューブリック
製作総指揮： ヤン・ハーラン
原作： スティーヴン・キング
脚本： スタンリー・キューブリック、ダイアン・ジョンソン
撮影： ジョン・オルコット
編集： レイ・ラヴジョイ
音楽： ベラ・バートック、ウェンディ・カーロス
１９８０年/イギリス・アメリカ映画
出演： ジャック・ニコルソン、シェリー・デュヴァル、ダニー・ロイド、スキャットマン・クローザース、フィリップ・ストーン 、ジョー・タークル

山岳の広大な敷地に建つ「展望ホテル」を舞台とした、スティーヴン・キング原作のゴシック・ホラー。小説家のジャック・トランス（ジャック・ニコルソン）は、シーズンオフのホテルの管理をする仕事を得ます。妻のウェンディ（シェリー・デュヴァル）と幼い息子のダニー（ダニー・ロイド）も一緒。この子には未来に起こることを夢で見たり、テレパシーで会話するといった不思議な能力があります。タイトルの”シャイニング”は超能力を指す言葉です。



ホテルは１９０７年に着工して２年後に完成した建物。そこはインディアンの墓地があった場所でした。建築中にインディアンの襲撃を受けたといいますから、土地の習得方法に問題があったのかもしれません。さらにさかのぼること幌馬車の時代（南北戦争あたりか?）雪に閉じ込められた隊が生き延びるために人肉を食べたという話しも伝わる土地です。何か邪悪な力が働くのでしょうか・・・・１９７０年にはホテルの管理人グレーディによる殺人事件がありました。妻と娘ふたりを斧で殺し、自分は猟銃を口に咥えて自殺したのです。

血塗られた過去を持つホテルは陰鬱な悪夢に包まれ、それらに操られるように精神のバランスを崩していくトランス。正気と狂気が入り乱れる複雑な心を、ジャックは驚異的な集中力をもって見事に表現しています。狂気の渦へ突き進むにつれて容貌にも変化が・・・乱れた髭、伸びた髭、くぼんだ目、青白い顔。



シンセサイザーとパーカッションによる音楽が恐怖をあおり、長まわしの移動撮影に緊張が走ります。トランスが完全に狂ったことを知り、観る者はさらなる緊張を強いられることに。トランスが数ヶ月もタイプライターで打っていた文章は無限に繰り返されていました。「仕事ばかりで遊ばないジャックは今に気が狂う」・・・・・これを見つけた時、妻は悟ります。夫は気がふれたと。露骨な殺人嗜好をもつ悪漢が姿を見せたと言えるでしょう。



トランスは狂い始めた頃から妻のことを「忌々しいヤツめ。いつも俺の仕事を邪魔してきた。今度こそはそうはさせない」と、憎悪を募らせていきます。この気持ちはホテルへ来る前から、トランスの心の中に芽生えていたものかもしれません。小さな芽であったであろう妻と息子への不満、さらには仕事のプレッシャーからくる不安定な心に、悪霊たちがつけこんだのではないでしょうか。人の心の深層をのぞけば、そこには狂気が潜んでいるのかもしれません。