ファイブ・イージー・ピーセス
原題:FIVE EASY PIECES
監督: ボブ・ラフェルソン
原作:
ボブ・ラフェルソン、エイドリアン・ジョイス
脚本: エイドリアン・ジョイス
撮影: ラズロ・コヴァックス
音楽:
タミー・ウィネット
上映時間 98分
1970年/アメリカ映画
出演: ジャック・ニコルソン、カレン・ブラック、ビリー・グリーン・ブッシュ、ロイス・スミス、ウィリアム・チャーリー、スーザン・アンスパッチ
ボビー・デュピー(ジャック・ニコルソン)は音楽一家の末っ子に生まれ、将来を嘱望されたピアニストでしたが、そのキャリアを捨て石油採掘の仕事に就いています。ある日、同棲しているガールフレンドのレイ(カレン・ブラック)から、妊娠していることを告げられ動揺したボビーは、逃げるように3年ぶりとなる実家へ帰るのです。ボビーはレイへの愛情を持ち合わせてはおらず、結婚して、彼女と生まれてくる子供の面倒をみるつもりはありませんでした。そんな彼を・・・病に倒れ車椅子に座ったままで口が利けなくなった父親、ボビーに理解を示す姉、バイオリン奏者の兄・・・は温かく迎え入れます。しかし、ボビーは自分の居場所が家にないことを悟ります。彼は無為の世界にしか生きられないのかもしれません。
ボビーがレイエットと実家へ向かう途中で車に乗せる女性の語りが抜群に可笑しい。「どこへ?」「アラスカ」「休暇で行くのか?」「清潔だから住むのよ」「なぜ、清潔なんだ?」「写真で見たら真っ白で清潔な感じがしたから」不可解な言動ではありますけれど、感覚的に理解できます。束縛から逃れるためには、アラスカまで行かねばならないのでしょう(笑)。精神的に解放されている人間を登場させることによって、レイに縛られているボビーの窮屈さを浮きぼりにしたシーンです。
強烈なキャラのぶつかりあう映画にあって、バイオリン奏者の兄のお人よしぶりは、微笑ましいというか間抜け(失礼)。交通事故に遭い、首にはギブスをはめています。事故は11ヶ月前だというのに未だ直らないとは・・・。おまけに弟にガールフレンドを寝取られるし。ふたりが罪の意識を感じているふうはなし・・・それもこれも、お兄さんのキャラが冗談っぽいからかなぁ。
ボビーが父親に自分の心境を泣きながら吐露するシーンは圧巻です。あらゆるものからの束縛を嫌い、他人の気持ちを汲もうとしないボビーが、始めて見せた人間らしい部分でした。方々旅するのは本物を探し求めてではなく、自分がいるとそこにあるものが悪くなるから逃げ出すのだと。ボビーには反家庭的な生き方しか出来ないのでしょう。結局、再び現実から逃げだします。そんなことを繰り返しても、充足感を得ることは出来ないとわかりつつ、放浪生活へと戻るのでした。
本作でも異彩を放つジャックの演技。人生を投げた人間の精神的疲労感を、自身の自堕落的な部分を重ね合わせるかのように表現しています。本作は「イージー・ライダー」と並ぶ秀作として高い評価を受け、アカデミー賞の作品賞と主演男優賞のノミネートを受けました。ジャックは旬のスターとして70年代を迎えることになります。
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ジャック・ニコルソンの館
【作品INDEX】
リトル・ショップ・オブ・ホラーズ(60)
忍者と悪女(63)
古城の亡霊(63)
旋風の中に馬を進めろ(66)
銃撃(66)
爆走!ヘルズ・エンジェルス(67)
聖バレンタインの虐殺/マシンガン・シティ(67)
白昼の幻想(67)
ジャック・ニコルソンの嵐の青春(68)
イージー・ライダー(69)
晴れた日に永遠が見える(70)
ファイブ・イージー・ピーセス(70)
愛の狩人(71)
キング・オブ・マーヴィン・ガーデン(72)
さらば冬のかもめ(73)
チャイナタウン(74)
さすらいの二人(75)
Tommy/トミー(75)
おかしなレディ・キラー(75)
カッコーの巣の上で(75)
ミズーリ・ブレイク(76)
ラスト・タイクーン(76)
ゴーイング・サウス(78)
シャイニング(80)
郵便配達は二度ベルを鳴らす(81)
レッズ(81)
ボーダー(81)
愛と追憶の日々(83)
女と男の名誉(85)
心みだれて(86)
イーストウィックの魔女たち(87)
ブロードキャスト・ニュース(87)
黄昏に燃えて(87)
バットマン(89)
黄昏のチャイナタウン(90)
お気にめすまま(92)
ア・フュー・グッドメン(92)
ホッファ(92)
ウルフ(94)
クロッシング・ガード(95)
マーズ・アタック!(96)
ブラッド&ワイン(96)
恋愛小説家(97)
プレッジ(01)
くたばれ!ハリウッド(02)
アバウト・シュミット(02)
N.Y.式ハッピー・セラピー(03)
恋愛適齢期(03)
ディパーテッド(06)
最高の人生の見つけ方(08)
幸せの始まりは(10)
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