恋愛小説家

原題 : As Good As It Gets
監督：ジェームズ・Ｌ・ブルックス
原案：マーク・アンドラス
脚本：マーク・アンドラス、ジェームズ・Ｌ・ブルックス
撮影：ジョン・ベイリー
音楽：ハンス・ジマー
美術：ビル・ブルゼスキー
編集：リチャード・マークス
上映時間：１３８分
１９９７年/アメリカ映画
出演：ジャック・ニコルソン、ヘレン・ハント、グレッグ・キニア、キューバ・グッディング・ジュニア 、スキート・ウーリッチ

メルヴィン・ユドール（ジャック・ニコルソン）は恋愛小説を得意とするベストセラー作家。しかし「暗闇の中で彼女は罪を告白し、彼は許した・・・愛とは・・・」なんてロマンティックな文言を並べた小説の世界と、彼の実生活は正反対。というのは、メルヴィンは大変人で自己中心的で毒舌家、周囲の人に暴言を吐いてはヒンシュクを買う嫌われ者なのです。おまけに病的な潔癖症。洗面所の戸棚には大量の石鹸が積み重ねてあり、一度の手洗いで数個を使います。すすぎは熱湯。「熱い！熱い！熱い！」と発しながら（笑）。こんな男がどうして恋愛小説を書けるかというと、メルヴィンいわく「最低の男を想像すればいい」のだそうです（汗）。

この小説家、差別意識も強く、ゲイと黒人とユダヤ人のことを嫌っています。なのに隣にはゲイのカップル、画家サイモン(グレッグ・キニア)と黒人の画商フランク(キューバ・グッディング・Jr.)が住んでいて、彼らとのトラブルが絶えません。ある日、サイモンの愛犬がアパートの廊下で粗相したことに腹を立てたメルヴィンは、こともあろうかとか、犬をダスターシュートに捨ててしまいます。「ここはニューヨーク、ホームレスは犬でも珍しくない」が捨て台詞。幸い、犬は飼い主のサイモンの元へ戻ることが出来ましたが、この一件以降、両者の仲はますます険悪になりました（汗）。



メルヴィンの弱点は、彼が食事に出かけるレストランのウエイトレスのキャロル(ヘレン・ハント）。どうやら淡い恋心を抱いているようで、彼女にだけは従順（笑）。それでも時々、失言しては叱られています。キャロルは喘息の息子を抱えて働くシングルマザー。メルヴィンの辛辣な言葉に対等に渡りあえる、少々怒りっぽい女性です。

各々深刻な問題を抱えた者たちが、サイモンが強盗に襲われた事件をきっかけに融和していく過程が洒脱な雰囲気のうちに描かれています。ウィットに富んだきわどいセリフの数々と、風変わりな登場人物プラス犬（笑）。それらを縁取る異様な出来事がきちんと交通整理されたうえで、細部に至るまで練り上げられており、スキがありません。完璧な演技と脚本が結合した素晴らしい作品です。ジャックが２度目のアカデミー賞の主演男優賞に輝きました。