バットマン

原題：Batman(1989)
監督：ティム・バートン
製作：ジョン・ピータース、ピーター・グーバー
原案：サム・ハム
脚本：サム・ハム、ウォーレン・スカーレン
撮影： ロジャー・プラット
SFX：デレク・メディングス
音楽：ダニー・エルフマン
美術：ナイジェル・フェルプス
１９８９年/アメリカ映画
出演：マイケル・キートン、ジャック・ニコルソン、キム・ベイシンガー 、ロバート・ウール、パット・ヒングル

「おぼろ月夜に悪魔と踊ったことがあるかね？」がジャック・ネーピア（ジャック・ニクルソン）の殺し文句。ブルース・ウェイン（マイケル・キートン）の両親は彼が幼い頃、このセリフの主に殺されました。時は流れ大富豪になったブルース。夜になるとバットマンへと変身し、犯罪都市ゴッサム・シティの悪と戦う日々です。一方、チンピラだったジャック・ネーピアはギャング組織のＮＯ．２になり、密かにボスの跡目を狙う中、ボスの愛人に手を出した事が発覚。その地位を失っただけでなく、バットマンに追い詰められた挙句に劇薬の入った水槽に落ち、道化のように真っ白な顔のジョーカーになってしまいます。鏡に映った己の姿を見て絶叫した後、彼は異常な振る舞いを見せ始めます。



まずは自分をハメて殺そうとしたボスへ復讐します。殺しにも「ゴッサッム・シティはいい街だ、自然に顔がほころぶ」と笑顔をふりまくジャックを見ると、私も開いた口がふさがらない（汗）。笑ったように見えるのは顔の筋肉が固まっているから。
↓は肌色のファンデーションを塗ったお顔。額の汗を拭うと白い素顔が顔を出すのですよ。



ボスを殺し組織を乗っ取ったジョーカーは”恐怖の帝王”となるべく、次々と悪行と奇行を繰り出します。となると邪魔になるのは正義の味方バットマン。こうしてジョーカー対バットマンの熾烈な戦いが繰り広げられることになりました。

ジョーカーになる前のジャック・ネーピアの精神面での特徴は頭脳優秀、情緒不安定で凶暴、化学と美術方面に才能を持つ男でした。これらはジョーカーの振る舞いに生かされ（？）ます。特殊な毒物を開発してバラまく。美術館の中を狂ったように踊りながら、美術品を破壊する・・・といった具合。



監督は当時２２歳のティム・バートン。マイケル・キートンを起用した『ビートルジュース』（この映画ではマイケルが白塗りの怪人を演じていましたね･･･笑）をヒットさせたばかりの新鋭監督でした。バートンのゴッサム・シティは陰鬱で忌まわしく、そのオープニングに映し出された街並みは恐ろしいほど不気味です。主役のマイケル・キートンはマッチョタイプではありませんがエネルギッシュな俳優。スーパーパワーを持たないバットマンを好演しました。



しかし何と言っても、この映画に活力を与えたのはジャックの、けたたましい演技でしょ（笑）。高笑いしたり、ダンスをしたり、殺したりという行為を、全くのユーモアの価値として示しています。扇動的な悪魔の部分と派手で茶目っ気のある道化の部分を絶妙に配合し、誰はばからぬ抑制の利かないジョーカーを演じきりました。ジョーカーは頭のネジが緩み配線が狂ったヤツではありますが、皮膚一枚の笑いの下には泣き顔があります。本作は不条理なまでのブラック・ユーモアに覆われた暗黒のメロドラマではないでしょうか。