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ジャック・ニコルソン出演映画
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聯合艦隊司令長官 山本五十六 ―太平洋戦争70年目の真実― 原作は半藤 一利著『山本五十六』。私は阿川 弘之著『山本五十六』は読んでいるが、半藤さんのは未読である。原作ではどのような五十六が登場するのだろう?映画の中の五十六(役所広司)は、私が思っている人とは違っていた。『連合艦隊司令長官 山本五十六』(1968年)で、三船敏郎さんが演じた「茶目っ気があるキリリとした司令長官」の方が、しっくりくる。(実際のところは知らないが) 本作の五十六は感情を表さない温厚で思慮深い軍人として描かれている。だからだろう、山本が日米開戦を前にして近衛首相に語った「それは、是非やれと言われれば一年や二年はずいぶん暴れてご覧にいれます。しかし、二年、三年になっては、全く確信は持てません。」という有名な言葉は出てこなかった。 賭けごと、勝負ごとが好きで、将棋・マージャン・玉突き・トランプ・ルーレット等なんでもござれだった部分も弱められていた。そこには真珠湾攻撃を「一か八か」の博打作戦と取られたくないという製作者の意図が見える。山本五十六が開戦に反対していたことは確かだが、鍛えに鍛えた力を一度は試してみたいという軍人特有の心理が多少とも心の中に働いたのではなかろうか。戦争の火ぶたを切った人間を、聖人視すのはどうかと思う。 しかし、真珠湾攻撃を失敗と捉え、先の戦争を反省する姿勢には好感が持てた。脚本が「亡国のイージス」や「真夏のオリオン」など、幼稚な(←スミマセン)戦争ものを書く長谷川康夫なので、一抹の不安があったが、地に足のついたストーリー展開となっている。特撮技術も高いように感じた。 映画は三国同盟(日本、ドイツ、イタリア)を主張する陸軍と、これに反対する「海軍三羽烏」・・・米内光政(柄本明)、山本五十六、井上成美(柳葉敏郎)との対立を浮き彫りにしている。冒頭、近衛兵が海軍省に銃口を向けるシーンが印象的だ。同じ国の軍隊なのに、陸軍と海軍では気風が違っていた。もともと陸軍は、明治以来、ロシアを北方からの驚異とし、作戦目標を対ソ戦に絞り、これと戦って驚異を排除することを陸軍の本義と考えていた。これに対し海軍は、アメリカを最大の仮想敵国と考えていたのだ。独伊と日本が軍事同盟を結べば、対米英戦争に巻き込まれる。山本らは資源を持たず、国力・生産力・技術力の貧弱な日本が、長期戦になること必至の戦争に巻き込まれることは絶対に避けなければならないと主張した。が、御前会議にて同盟の締結、対米開戦が決定される。 戦うからには勝たねばならない。五十六の戦略は、次々と先手をとってアメリカの心臓部に攻撃を加えて主導権を握り、アメリカの戦意を失わせて有利な和平を結ぶというものである。こうして真珠湾の奇襲攻撃が行われた。宣戦布告もなく・・・。宣戦布告は外務省のミスにより、攻撃開始の約1時間後となってしまったのだ。アメリカ国民は怒った。ルーズベルト大統領の「だまし討ち」「リメンバー・パール・ハーバー」というラジオ演説にアメリカ国民が団結し、その士気を高めたという逆の結果が出てしまう。 作戦そのものも、中途半端だった。真珠湾攻撃が予想外の大成功を収めても、第一航空隊司令官南雲中将(中原丈雄)は第二撃をかけず、高速で避退した。山口多門第二航空隊司令官(阿部寛)がつぶやく。「南雲さんはやらないよ」・・・一方、電報で南雲の反転を知った幕僚たちが、第二撃を命じてくださいと言いたてたのに対し、五十六は「泥棒でも帰りは怖いよ」とつぶやき作戦室から出てゆく。ずいぶん、淡泊な人だなぁ。これはミスショットでしょ。同じ台詞でも、吐き捨てるような言いまわしにすれば、緊迫感が伝わってきただろうに。それはさておくとしても、作戦の実施に当たって反目する南雲中将にやらせたのがよくなかった。ミッドウェーでも南雲中将の判断ミスで日本は多大な犠牲を出してしまう。もし、五十六が日本海海戦の東郷平八郎のように陣頭に出て作戦を実施していれば、違う結果になったであろう。 作戦失敗にうなだれる南雲中将に、五十六が茶づけを進める場面には胸がつまった。哀しみを分かち合うときに、光を放つ人間味を見たからだ。なぜ、五十六が愛惜されたのか、その答えを見出せるシーンだった。そして思う。五十六が真珠湾攻撃に熱意を燃やしたことと、戦争に反対したことを、矛盾なく理解できる人は少ないのではないだろうか。。。真珠湾攻撃から70年。なぜ、戦争しなければいけなかったのだろう?私にはよくわからない。 |