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ジャック・ニコルソン出演映画
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イヤー・オブ・ザ・ドラゴン ニューヨークのチャイナタウン。爆竹が炸裂する中を旗をかざして練り歩く人、人、人・・・・。横浜の中華街で、これに似た光景に出くわすことがある。週末ともなると、人をかきわけなければ歩けやしない。店に入ると中国語が飛び交っている。日本に来て相当の年月が経っているだろうに、華僑は日本語をしゃべらない。でも、料理は美味しく店内は盛況だ。 中国の経済発展は目覚ましく、今や経済大国となったが、ちょっと前までは人民服を着て自転車に乗っている人々というイメージだった。この映画が製作されたのは85年。あのころの中国はどうだったかなぁ・・・・天安門事件の前だから、人民が悶々としていた時代だろうか。西側諸国の中国への目は冷たく、蔑視さえしていたように思う。本作にも、中国人差別の思想があるように感じる。 監督は『ディア・ハンター』(78)のマイケル・チミノ。映画に登場するベトナム人の描写は悪意に満ちており、ベトナム戦争をゆがめて伝えているという非難もあった。しかしながら、ベトナム戦争とそれが残したものを題材として、真のテーマを作品の奥深くに内在させた秀作だと私は思う。『ディア・ハンター』と比べると『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』は中身が薄い(汗)。『天国の門』(80)の失敗があっただけに、見る目が厳しくなっていたのかもしれないが・・・・。今観ても、その印象は変わらない。 本作はチャイナタウンを舞台に、チャイニーズ・マフィアの内部抗争、ニューヨーク市警刑事スタンリー(ミッキーローク)との血で血を洗う対立を描くことによって、アメリカにおける人種問題をあぶりだしている。チャイニーズ・マフィアの若きボスを演じるジョン・ローンは白いスーツをドレッシーに着こなし、いかにも冷静なキレ者という感じ。ジョーイ(ジョン・ローン)は舅のボスを暗殺しその地位を奪った。チャイナタウンは一枚岩の社会ではない。組織はイタリア系やアイルランド系マフィアと矛盾を起こす可能性を持っていると同時に、内部でも絶えず矛盾を起こしている。ジョーイは伝統を重んじる中国人マフィアであるが、いつまでも古い掟を温存することは得策でないと思っている世代だ。旧世代の圧力をハネ返しつつ覇権を目指すジョーイは過激な殺戮を繰り返すようになる。 このチャイニーズ・マフィアに対し、並々ならぬ覚悟を持って挑むのが、ポーランド系のスタンリー警部である。だが、チャイナタウンの平和のために戦うという姿勢には見えない。スタンリーの不機嫌さ、屈折した心情は正義の人からは程遠い。アジア人に対する偏見はベトナム帰還兵だからだと言う。人種偏見と女性差別意識が強いスタンリーは中国人女性と関係を持つに至る。しかし本人は自分の行動に自信を持っており、すべて正しいと思いこんでいる。決して妥協しようとはしない。それによって自分の妻や部下が命を落とすことになっても、信念を曲げない。 警部スタンリーとマフィアのジョーイ・・・立場は違うがどちらも危険なヒロイズムに走る異常者だ。二人の確執が次第に過熱し、有無を言わさぬクライマックスへと暴走していく流れは面白い。鉄橋での死闘は美しくさえある。が、登場人物の性格は飛躍しすぎで、観客の共感を得にくいものとなっている。アクション映画と社会問題を両方やろうと欲張った結果、ストーリーは一貫性を失い、散漫な映画となったのではなかろうか。 【作品情報】 原題:Year of The Dragon 監督:マイケル・チミノ 製作:ディノ・デ・ラウレンティス 原作:ロバート・デイリー 製作国:1985年アメリカ映画 上映時間:2時間14分 |