山本様

はじめまして、佐藤と申します。いつも楽しくHPを拝見しております。拝見しているうちに、あまりに楽しそうなので投稿させていただくことにしました。

アドレスからもおわかりの通り、私はメーカーでオーディオ機器の設計を担当していますので、土日くらいは仕事のリフレッシュもかねて音楽を聴きたいと思ってシステムを入れ替えているうちに、自宅のメインシステムは、以下のようなきわめてレアなアイテムになってしまいました。

CDトランスポート アンサンブル ダイクローノ・ドライブ
DAコンバーター アンサンブル ダイクローノDAC

カートリッジ 光悦 ウッド・プラチナ(春から秋用)
        クリヤーオーディオ セラミック(冬用)
アーム エミネント・テクノロジー2.0
プレーヤー SOTAサファイヤ・スペシャル
フォノイコライザー ヤマハ HX10000

プリ チェロ アンコール1MΩ
パワー アンサンブル コルフェオ

スピーカー アンサンブル プリマドンナ・ゴールドEC

ケーブルはアンサンブル・シルテック・ゴールドムンドなど多数

これを8畳板の間に入れています。オーディオの他にもパソコンやら本がありますので、広大な3次元的ステレオイメージは望むべくもありませんが、スピーカーを意識しないような、いい意味で軽やかで、華やかな音を目指してはいます。(実際には実現が難しいです。)

  

   

2000年4月に新しいラックが入り、レイアウト変更をしました。その前後は写真の通りですが、これは大変大きな変化でした。

もともと床や壁が弱い上に、音響迷路のスピーカーですから、一拍遅れてドーンと低音が来ていたのですが、ほとんどそんな感じがなくなりました。やはり振動の問題って大きいのですね。さすがにすごい効果ですが、価格を考えると何方にでもおすすめは出来ません。


そんな私の考えるセカンドシステムですが、

スピーカー アンサンブル プリマドンナ・ゴールドEC
パワー アンサンブル エヴィーボ
プリ・DAC アンサンブル ダイクローノDAC・プリ
CDトランスポート アンサンブル ダイクローノ・ドライブ
ケーブル アンサンブル

というアンサンブルのフルシステムになってしまいました。やはり私としてはアンサンブルのスピーカーははずせないものになっており、もし今のスピーカー交換するとしてもアンサンブル以外は考えられない状況です。さらに経験上その大好きなスピーカーをならすシステムも同社製品で組むのがもっとも良いように思います。今では輸入元がなくひじょうに残念です。アナログはセカンドシステムということではずしました。今からアナログをめいっぱいやるとなるとサブシステムにはなりにくいと判断したからです。

このシステムで聴きたいのは、やはり女性ボーカルというところでしょうか。プリマドンナはバタ臭い音は無理ですが、打ち込み系もそれなりにこなしてくれると思っています。

長文メールにて失礼しました。今後もHPのアップデートを楽しみにしております。


2000年の2月、こんなメールが舞い込んだ。StudioK's HPも立ち上げて二年、オーディオページの充実に伴い、時々知らない人からメールを頂戴する。このメールをもらった一週間後、佐藤さんがスタジオに遊びに来た。そして、その一週間後も(彼もリニアトラッキング派だから、STUDIETTOが戻ったので)、今度はお友達も誘って音をききに来てくれた。

上に書いてあるメインシステムと架空セカンドオーディオは、殆ど変化がないので「なんじゃ?こりゃ、どこがメインでどこがセカンドなんだよ」と思う方も多いだろう。実際僕はそう思ったので、ちょっと解説をしよう。佐藤さんはSONYに勤務していてスピーカーの開発をしてる人だから、メインシステムは職場にあると言っても良く、それもかなり趣味性の強い機器が多数選ばれているらしい。故に、彼の自宅には、架空ではないセカンドシステムが置かれているというわけだ。

SACDが発売された頃、僕は一緒に出たスピーカー"SS1ED"を「オーディオユニオンお茶の水店」で見た。鳴っていたのは例の如く店頭効果を狙ったソースだったが、僕は「SCD-1やアンプより、妙に日本離れしているこのスピーカーを、一度自分の部屋に持ち込んでで音をきいてみたい」と思った。あれはこういう人によって作られたのか。(山本)


昔は僕も、今よりよく読書をした。CD以前は、LPだとかけ替えが面倒なので、テープやFM放送をききながら本を読んだ。読書のBGMとして不向きな音楽というのは確実にあって、例えば現代音楽をききながらの読書は、困難な事が多い。ベートーヴェンなども曲によっては音楽に気を取られて読書の妨げになった。FMで最も読書の妨げになったのは午前11時からの「朗読の時間」で、「こんにちは、草野大悟です」なんてやられると、これはもう読書をやめるかFMのスイッチを切るかしかない。

今日の午後、佐藤さんのシステムをきかせてもらってきた。佐藤さんがかけてくれた音楽はCDもLPもちょっとボリューム上げすぎかなって感じで、高域が少々にぎやかだった。来客を意識して普段の音量を超えていたのだろうと思われる。途中からはボリュームを控え目にしてもらい、それでうまくはまるソースをかけると、押しつけがましさがなく、なかなか楽しめる。もし、部屋があと少し広くて、床や壁がシッカリしていたら、この路線でもっと楽しめるだろう。佐藤さんの音はどんなだったかと言われたら、僕は「ハイエンドオーディオ版B&Oのラジカセみたいな音」だと答える。細身で軽い音だ。彼は「仕事から帰った後、あるいは日曜日の午後、お茶でも飲みながら適当な音量で、読書をしたり、まどろんだり、要するにくつろぎながら音楽を楽しむには、この軽さが必要だ」と言う。ではB&OやBOSEのラジカセや「CD電蓄」でもOKかと言うと、それは許せない。何故かって? 佐藤さんの趣味はオーディオだからだ。重低音も、「なんとなくでいいから」出ていてくれないと困るのである。でも、おいしい中域は薄くて高域がしゃくれ上がっているのは許すのだ。カメラなら、何台も所有して使い分けられるから「オートボーイ2」もいけるって事になるのだが、オーディオ装置は通常1セット限定だ。いじって遊べて、高級な質感や操作感を満足させる事が出来て、しかも鬱陶しさのないスピーカーとして、佐藤さんはアンサンブルのプリマドンナ、そして現用の機器を選択した。

こんなに高い機器なのに、こんな音でいいのかね。という感想を持つ人はいるらしく「シスコンみたいな音だ」と言われる事があるそうだ。音はその人の作品みたいなものだから、音に対して否定的なコメントを言うと、言われた方はかなり傷つくものだが、佐藤さんには「このスピーカーってこんなにダメだったの? ひどいね」なんて平気で言えてしまう。佐藤さん本人も「設計者のワーグナーさん自身が好きなジャンルの音楽をうまく鳴らすためにしか作ってないようなスピーカー」なんて言う。「いや、好きなジャンルと言うより、限られたソフトしか持ってないんじゃないの?」なんて言いあって「がはは、でも、プリマドンナでしか得られないサウンドがあるんですよ」と笑うおおらかさが佐藤さんの魅力だ。プリマドンナって13cmの2Wayで、無理矢理低音を出している構造だから、真面目に取り組むと不満を感じる人は少なくない。実際「あれは、チェロの胴鳴りが出ない」と言って手放した人を知っている。こういう、不完全な面を笑って許せる余裕がない人じゃないと、プリマドンナは使う資格がない。大メーカーのスピーカー設計担当者である佐藤さんから見て、アンサンブルみたいな個人プレー度満点のスピーカーは「夢」あるいは「あこがれ」なのかも知れない。

「普段は仕事で未完成の半分壊れている音ばかりきいているから、自宅ではそういう事を気にする必要のない音じゃないと耐えられない」と佐藤さんが言う。あそこをああすれば、こういう音になって、こうすればああなって、なんて事を判断するのが仕事の人だから、多少アンバランスでも、何かが欠落していてもいいから、そういうものを超越した異次元のサウンドが良いらしい。組み合わせる機器によっては、もっともっと普通の音にもなると思うのだが、佐藤さんは「あえて、チャチな音を追求している」かのようだ。

スタジオに戻って自分の音をききながらこれを書いている。僕の音も決して重い音ではないが、どうやってもあんなに軽くはならないと思った。2000年4月22日(山本)


2000年7月25日に送られてきた画像とおたより

スピーカー間の棚が1m60cmですから、いまのスピーカー間の距離は1m80cmってとこでしょうか。でも8畳ではこれが限界です。これでひとまずセッティングは終了で、山本さんのところで聴かせていただいたアナ ログを参考に、次はリンのフォノイコライザーとなにかフォノケーブルを購入する予定です。カートリッジはさらにその次でしょうか?

富田さんのところで聴かせていただいたシナジスティックのケーブルにも興味はある のですけど、いっぺんには揃えられないので、その辺が辛くも楽しい悩みどころでしょうか?

それでは。

おお、なかなかオーディオマニアっぽいと言うか、音最優先的レイアウトになりましたね。(山本)


佐藤氏のサウンド               富田徹

SONY製スピーカー開発の仕事をしている佐藤氏は、いったいどんな音で音楽を聴いているのだろう。今回の訪問はその意味で実に興味深いものだった。実際に音を聴いて最初に感じたことは、想像していた音とかなり違ったことである。
佐藤氏とは、これまでにもオーディオの話題でいろいろ刺激しあってきた間柄ではあったが、彼が鳴らしている音に関しては、山本氏が書いた文章から想像するしかない。その内容を読む限りにおいては「軽い音」とか、また、中域が薄く高域のしゃくれあがった細身の音とか書いてあるから、僕好みの音ではないだろうなと思っていた。ところが、音が鳴った瞬間、僕にとって何の違和感も無い音が、パッと出てきたから驚いた。
彼の部屋はオーディオにとって決してよい環境とは言えない。機器の設置環境や、エアーボリュームからイメージできる音は、山本氏が書いている通りである。だがそこで鳴った音は、文章から想像される音とはまったく別なものだった。
具体的に言うと、音が立体的に定位する情報量の多い精密な音と言っていいだろう。特に驚いたのは音色の正確さである。これには秘密があって、この音色と立体感はケーブル1本替えるだけで無くなってしまうのだ。この変化には僕も岡崎氏も驚いた。このケーブルを何としてでも自分の装置で使ってみたいと思わせたほどの変わりようである。
そのケーブルは何かって、それは残念ながら秘密である。

佐藤さんちの音               岡崎俊哉

佐藤さんの家にうかがい、音を聴かせていただきました。部屋に入れていただくとプリマドンナが清楚なたたずまいですくっと立っていました。ただ、このプリマドンナはただの清楚な美人ではなかったようです。

アンサンブルのプリマドンナといえばその音色にこそ特色がある独特な色気を感じさせる音で、好き嫌いがはっきりとでそうな感じの音、と以前に聴いたときは思っていたのです。

佐藤システムの音は、まずその歯切れのいい低域に魅力を感じました。普通、プリマドンナの低域はあまり量感もないし、位相の整った制動力のある鳴り方をしない、そのため、スケール感がでない音になってしまうのですが、佐藤さんはじつにうまくその欠点を補っていました。

その低域の上に、プリマドンナの色気のある中高域が存在します。低域がしっかりしているため、その色気が上っ滑りしないで、実に美しいハーモニーを奏でてくれます。CDを聴かせていただきましたが、ハイビット、ハイサンプリングにアップコンバートしていないにもかかわらず、CD臭さを微塵も感じさせない音でした。

また、音場感も部屋の関係上、広大とはいきませんがじつによくわかります。やや俯瞰的な視点からきれいな広がりがありました。佐藤さんの家のプリマドンナはやや控えめながらも実力は折り紙付きの美人でした。
 
佐藤さん、実にプロの仕事をみせていただきありがとうございました。今後、CDをハイビット、ハイサンプリングにアップコンバートされるとのこと、その折りにはまた聴かせてください。

この感じだと、春に僕がきかせてもらった音とは大幅に変化しているようですね。写真を見ても、部屋の様子が全く違うし、佐藤さんに(自宅で)やる気を出させた背景には僕たちとの交流があると思うのですが、どうでしょうね。今度、Perpetualの三点セットがそろったら、それを持って遊びに行こうかな。 (山本) 2000.12.4


2001年5月27日現在の使用機器
CDトランスポート:アンサンブル ダイクローノ・ドライブ
DAコンバーター:アンサンブル ダイクローノDAC

アナログプレーヤー:SOTA サファイヤ。(フルオプション)
アーム:エミネントテクノロジー ET2+マグネシウムアームパイプ
カートリッジ:クリヤーオーディオ セラミック
フォノイコライザー:ヤマハ HX-10000

プリアンプ:チェロ アンコール1MΩ
パワーアンプ:アンサンブル コルフェオ

スピーカー:アンサンブル プリマドンナ・ゴールドEC

接続ケーブル関連
デジタルケーブル:キンバーセレクト KS-2020
インターコネクトケーブル:
MIT MI330(アーム-フォノイコ)
*ストレートワイヤー クレッシェンド(フォノイコ-プリ、DAC-プリ)
これが富田さん言うところの秘密のケーブルです(笑)日本未入荷が残念です
ゴールゴムンド リニアル(プリ-パワー)
スピーカーケーブル:アンサンブル ヴォイス・フラックスFS(バイ・ワイヤー)

電源ケーブル:
シナジスティック・リサーチ リファレンスACマスターカプラー(トランスポート)
JPS デジタルAC(DAC)
MIT Z−Cord2(プリアンプ)
SAラボ ハイエンドホース3.5(WattaGate使用による自作)

ラック
ゾウセカス Z.4R

壁コンセント
ハッベル 8300I

テーブルタップ
MIT Z−cord2+CSE H−66CL

オーディオベーシックのケーブル試聴で試聴機材が150字と制限されたものですか ら、ほとんど省略されてしまいました。そこで山本さんのページをお借りして、使用 機材を明らかにしたいと思ったわけです。その方が記事を読んでくださる方にとって 有益ですから。記事では山本さん命名の「井出」を名乗っていますが、日本でアンサ ンブルを使っている人なんてたかがしれていますから、すぐに僕であることは分かる と思います。

それにしてもこうして書き出してみますと、この1年の変遷の大きさには驚くばかり です。使用機材は変わりませんが、ケーブルなどほんの一部を除いて総入れ替えにな りました。部屋のレイアウトも変わりましたし、確かに激動の一年ではありました。 これもひとえに山本さんはじめ富田さん、岡崎さん、柳沢さんなどの音を聴かせてい ただいた影響だと思います。

ここには書き切れませんが、その他にもたくさんのケーブルを購入しては売り払った りしていますから、使った総額はけっこうな額になるでしょう。


 久しぶりの、決して刺激的ではない刺激

1年半ぶりに佐藤さんの音をきかせてもらった。「前と全然違うじゃない」「なーんだ、やればやれるじゃないの」と叫ぶ僕がいた。僕は今の佐藤さんの音、すごく好きだなあ。音が軽々としていて、ピアノも良い意味での甘さと香りがあるし、「**限定」ってところがなくて、一般家庭の普通の部屋のオーディオとして(実際は計算されつくした音響処理がされていて、一つも普通ではないんだけど)最高に楽しめる音だった。クルマに例えると、ヨーロッパの魅力的な乗用車「プジョー306 カブリオ」サウンドと命名しよう。この一年ちょっと、彼はケーブル以外の機器をまったく買い替えていない。やったのは1)部屋の片づけ 2)機器の置き換え 3)部屋の響きの調整だから、要するにセッティングと呼んでいる行為だけだ。使いこなしでここまで変化するのかと、あらためで目からウロコが落ちた。このところ僕の音は少し普通では無くなっているので、「行けるところまで行ったら戻って来るのもいいな」と、そんな気にさせられるサウンド傾向だった。僕が初めて体験するタイプのとても美味しい音だったから、音を良くするためのテクニックとかではなくて、この感じを体にインプットできた事が、いつか必ず僕の何かに実を結ぶだろう。今夜はきかせてもらって良かったと本当に感謝しています。(山本)2001.8.2

 佐藤さんの新しい音  岡崎俊哉  2001.8.12

昨年の11月以来、久しぶりに佐藤さんの音を聴かせていただいた。音の変化は
想像以上のもので、非常に驚くと同時に納得させられるものであった。

山本さんも書いているように、佐藤さんの機器に変化はない。ただ、しつこいく
らいに細かくチューニングを施されただけである。その音はぱっと聴いた感じで
は特にどうということはない普通の音に聴こえてしまうのだが、それは、バラン
スが良いためで、音色、音像の実在感、音場感と各要素が高次元でバランスした
素晴らしい音であった。最近、我が家ではデジタル系はアップサンプリングをし
て聴いているので、通常フォーマットの音に対してはやや厳しい感想を持ってし
まうことが多いのだが、佐藤さんのチューニングはそんなフォーマットの制約を
飛び越えて、実に自然に音楽を楽しませてくれた。

また、次号のAudio Basic誌の取材のため、佐藤さんのところには多数の電源ケー
ブルがあり、その一部を聴かせていただいたが、ケーブルの音の変化がとてもよ
くわかるのが印象的であった。Basic Theoryとしてのシステムのチューニングが
しっかり出来ていなくては、ケーブルの差異による変化量などはあまりでるもの
ではなく、そういう意味でも佐藤さんのチューニングは実にピントが合っていた
と思われた。電源ケーブルのなにがどうであったかは次号のAudio Basic誌をお
待ちいただくとしても、佐藤さんの試聴結果は信頼性と再現性が高いと考えられ
る。

あんなに、完成度の高い音が出てしまって、佐藤さんの音は今後どこに向かって
いくのか非常に興味深い。(いよいよ機器の入れ替えの可能性大?)また聴かせ
てください。楽しみにしています。

 


 山本様

 こんにちは、佐藤です。

 なんとか段ボールを片づけてて写真をとりました。

 設置したのはLD10畳ですので、完全に「居間の
 ステレオ」に成り下がりました。
 音色に特に大きな問題はありませんが、スピーカーの
 上に台所から続く排気管が張り出しているため、高さ
 方向の表現力がもの足りません。
 部屋の左右の条件が違うのは、いまさら仕方がありません
 ので、カーテンなどで処理するつもりです。

 使用している機材に変更はありませんが、アクセサリー
 は一部変更しました。

  デジタルケーブル
 KIMBER KS-2020 → AET U.R.(BNC)

  スピーカーケーブル
 アンサンブル ヴォイスフラックスFS → KIMBER    4TC+KS-9035

 山本さんのお嫌い「矩形」も持ち込んでいますが、いまは
 使っていません。もっぱらケーブル類のエージングにいそし
 んでいます。木造住宅からマンションに引っ越したので、
 音が根本的に変わったことをのんびり楽しもうと思ってい
 ます。

 さて、ここからどんなふうに変化していきますやら。

   それでは   2002.6.3

山本様

お帰りなさいませ。
この6日間、HPの更新がないというのは退屈なものですね

さて、山本さんが夏休みをとられている間、僕はAB誌の原稿を一本書き上げ、そして念願のスーパートゥイーター計画をスタートしました。みなさんにお勧めしていたものの自分では使っていなかったのですね

いまは部品を集めているところで、添付の写真のように、オーダーしていた高さ調整用のスペーサー(御影石製)がやっときました。あとはネットワークを思案中です

うまくつながった際には、ご招待いたします

OK、サブ・ウーファーを携えて襲撃しましょう

 2002.8.11

ようやくスーパートゥイーターが完成しました。今日から早速、試聴開始です


インプレッションは、音が安定してからお知らせしますが、アップコンバートしていないCDでも変化が感じられ、新たな発見があります

2002.9.14


佐藤さんが新居に越してから、オーディオ関係者が部屋を訪れるのは私が初めて
だという。今回は記事の打ち合わせが主目的ではあったが、一番乗りの栄誉を噛
み締めつつ、音を聴かせていただいた。

おーっ、かなり違う。以前の音は一度しか聴いていないが、全然違う。適度な広
がりの音場空間にピシッとリアルな音像が定位するのは以前と同様だが、部屋の
造りが違うことがもろに音に出ているようだ。ガッチリした造りのマンション
で、天井とスピーカー後方の壁がコンクリート、床もフローリングのわりにしっ
かりとしている。そのためか、音の安定感が増したというのが第一印象だ。SN
も良くなったようだし、音色も以前のほんのり甘みを含んだようなものから、ニ
ュートラルあるいはほんのわずか辛口方向に変化したように感じる。スピーカー
ケーブルのグレードアップ、スーパートゥイーターの追加(これはスゴイ効
果!)などともあいまって、基本部分においてはかなり底上げされているのでは
ないだろうか。実に端正なたたずまいで、機器の実力の高さをまざまざと見せつ
ける。

ただし、である。部屋が変わると必ずしも良い変化ばかりではないのがオーディ
オの難しいところ。佐藤さんは自らその部分を聴かせてくれたが、スピーカー後
方の壁が堅固ゆえに低域をもろに反射させ、以前なら抜けてどこかへ逃げてい
た、低域の特定の周波数帯域がズズン、ドワ〜ンと盛大に鳴るのだ。また、部屋
にまだ物をあまり入れていないせいか、中高域も音楽によっては響きがうるさく
聞こえる場合がある。これも以前の部屋にはなかったことだ。

もっとも、現在の音を佐藤サウンドと表現するのは無理があるだろう。佐藤さん
はルームアコースティックの調整はまだほとんどやられていない。「オーディ
オ・ベーシック」誌でそこらへんを実体験リポートしていただきたいとお願いし
ているので、これからいろいろと試してみたいことを残しているのかもしれな
い。今後、遮光カーテンも入るようだし、奥様手作りのタペストリーも出来あが
ってくるそうだ。
 
ゆっくりと楽しみながら調整を加え、どんな音になっていくのか、佐藤さんの耳
とテクニックを考えれば、こんどお邪魔するのが今から楽しみである。

2002年9月29日    金城 稔


SS-TW100ED導入記(その1)
1.はじめに
自分自身で設計した製品のインプレッションを書くのもどうかと思いはするのだけれ ど、いまだに接続方法その他について、問い合わせをいただくことが多いので、ここ で自宅での導入実験をまとめておくことにした。自宅に導入するに当たって、設計的 にやり残したと感じていたネットワークについては最初から、よりハイグレードの パーツで組み上げようと考えていたが、セッティングにこれほど苦労するとは自分自 身、考えていなかった。

2.セッティング
愛用のプリマドンナはバッフルがキャビネットに対して、5cmほど飛び出している ため、石材店にて3cm厚黒御影石のインシュレーターを使って、嵩上げをしてい る。天板にこれを載せるだけで、天板の響きが抑制され、音色が端正な方向に向かう のだが、同時に高さ方向の拡がり感が減じられる。材質については様々なものを検討 してみようと思う。
さて、御影石をそのまま天板に置いただけでは、鳴らしている間に微妙に位置がずれてくるため、滑り止めに特殊な制振シート(t0.6mm、塩ビ系)を挟んだ。一般 にはクロロプレンゴム(ただし0.5mm厚以下)で代用可能だろう。振幅が0.1 mm以下であるから、がたつき、ぐらつき、スリップは丹念に取り除く必要がある。
トゥイーター本体は、プリマドンナのユニットとインライン配置になるように天板の センターに、バッフルにさわらないギリギリ前に置いた。
我が家の場合、スピーカーケーブルにはキンバー4TCを使用したのだが、ケーブル 自身の重みによって、鳴らしている間に位置がずれてしまった。そこで、ビニ帯を使 用して、ストレスをかけないように注意しながらケーブルをキャビネットに固定した。

3.ネットワーク
ネットワークはコストとサイズの問題から解放されたため、入手可能で出来るだけ良 い部品を採用した。遮断特性は−24dB/Oct、カットオフは約30kHzと し、定数は以下の通り。
C1:0.47uF+0.1uF
C2:0.33uF+0.1uF
L1:0.048mH
L2:4.7mH
コンデンサーはMIT製PPFXS、コイルはSOLEN製空芯リッツ線巻きとした。

ネットワークについて、どうしてこうなるのか?定数を変えるとどうなるのか?とい う具体的なご質問にはお答えできないが、測定とコンピューターシミュレーションを 使って(もちろん試聴も)決定した回路である。この回路で複数のTW100ED ユーザー宅において試聴実験も行っているが、おおむね良好な結果を得ている。基本 的には組みあわせるスピーカーとオーバーラップすることなく、高域再生限界より高 い周波数帯域に追加するのが良い、と考えている。
プリマドンナは4オーム、能率が89dB(2.83V入力)となっており、8オー ム、86dBのTW100EDとの能率差はほとんどないと判断し、アッテネーター は使用していない。ごくわずかな能率差よりもシリーズに抵抗を挿入するデメリット 嫌ったということである。
またネットワークの入力はスピーカーの空いている端子に接続した。取扱説明書には アンプに接続するように書かれているけれど、アンプがバイワイヤリング対応でない ため、次善の策として妥協した。よくスーパートゥイーターの追加によって、イン ピーダンスの低下を心配される方がいらっしゃるが、使用帯域が20k以上であるか ら、特殊なスピーカーを除けば問題ないと思われる。

4.セッティング
TW100EDはとにかくエージングに時間がかかる。先に導入された岡崎氏によれ ば、半年間は音が落ち着かなかったということであった。我が家でも9月に導入して から、ひたすら鳴らしつづけ、ようやく最近になって違和感がなくなってきた。
プリマドンナとの接続は正相とし、前後の位置出しを丹念に調整して、つながり近辺 の違和感を追い込んだ。たとえばTW100EDを0.5mm後ろに移動しても、音 像のフォーカスが滲んだりするので、音場の拡がりと音像のフォーカスに注目してい れば、位置出しは比較的容易だろう。現在はバッフルから3mm後退したところに置 いたところ、立体的な音場と音像のフォーカスが得られた。この状態で試聴してみる とCDでさえ、明らかな変化が感じられる。スーパートゥイーターだけで聴いてみて も、ごくわずかにチリチリ鳴っているようにしか聴こえないのだが、想像以上の影響 力を持っているのがわかる。
ただ、ここで”変化”と書いたように、追加による効果は現状、一長一短なのだ。そ こで、ひとまず位置は固定してセッティングを検討してみることにした。最初はス ペーサーの御影石からだ。

先日、久しぶりに佐藤さんの音を聴かせていただいた。前回うかがったのは現在のマンションに引っ越されたばかりの頃で、
さあ、これからという時期であった。木造一戸建てからコンクリートの集合住宅という変化は予想以上に大きく、ややとま
どっていらっしゃるのかも、という感じもあった。その後のアプローチと音の変化はAudioBasic誌に詳しいので記さないが、
今回、久しぶりに訪問させていただいて、大いに感銘を受けた。
実は、訪問にうかがう車の中で私は富田さんに、確かに佐藤さんのことだから音はまとまっているに違いない、ただ、低音は
どうか、プリマドンナの欠点がかえって目立つのではないか?というかなり失礼な予想を立てていた。(すみません。)しか
し、それは杞憂にすぎなかった。佐藤さんの出す音は決して大音量ではない。しかし、その音はすべての帯域で実にバランス
のとれた音であり、しっかりとダンピングの効いた低域が聴き取れた。確かに大音量にすればプリマドンナは中高域と低域の
バランスは取りやすい、しかしそれはあやういバランスで、破綻を予感させるものであり、そこがプリマドンナの妖しい魅力
でもあるのだ。しかし、佐藤さんはその手法を取らずに実に正攻法な形でプリマドンナを攻め、そしてすばらしくバランスの
整った低域を中音量で手に入れた。また、その高域は繊細なガラス細工のようであり、それが佐藤さんの好みの音であると思
うのだが、実に魅力的な音であった。
佐藤さん、次の一手はどうされますか?ここからはノウハウは無く、しかも努力と成果が一致しない領域です。自分を信じて
さらなる高みを目指すしかないと私自身も日々痛感しています。    2003.8   岡崎俊哉

佐藤邸訪問            富田 徹

佐藤氏の音を聴くのは何年ぶりだろうか。新居に移られる前に2回ほど聴かせてもらっているが、その時は狭いリスニングルームにもかかわらず奥行きの感じられるサウンドで、狭さを意識させないその鳴り方は、さすがはプロフェッショナルと思わせる優れたものだった。今回は新居に移られて初めての訪問。その状況はすでにオーディオベーシックで執筆されていたこともあり、何となくイメージとして頭に入っていた。

第一声を聴いた瞬間、ぞくっときた。僕がイメージしていたサウンドを大きく上回っていた。見た目の状況からは想像できないスケール。手を伸ばせば触れられるようなリアリティ。以前聴いた佐藤サウンドとは次元が違っていた。以前も素晴らしいサウンドではあったが、やはり環境やシステムの限界というものを感じずにはいられず、そのチューニング能力に感心しながらも心に響くまでは至っていなかった。それが今回は音が出た瞬間から僕の心に音が浸透してきたのだ。

このようなサウンドを聴くのは久しぶりである。料理でいえば「なんて美味しいんだろう」と幸福感を感じるのと同じだ。音量は控えめだがもの足りなく感じない。音場は大変広く、音像だけがポッと浮かぶような鳴り方とは異なる。空間が出来上がりその中で楽器や歌手それぞれが定位しているといった鳴り方なのである。どんなシステムでもステレオだから当然、スピーカーの無い空間に音像は定位する。が、それが音場をともなうかとなるとそうは簡単にいかない。ましてやその音像にリアリティがともなうかというレベルにまで達するにはかなり難しいはずだ。

佐藤氏は新居に移って1年以上かけてこのサウンドを作り上げたと話してくれた。1年でここまで到達するとは、恐ろしい使い手である。佐藤氏はスピーカー設計士であるからこの音は当然と言えば当然なのかもしれない。実際に僕は佐藤氏の設計したスーパートゥイーターをのっけているし、彼は普段から我々が想像もし得ないレベルの音を仕事として聴いているはずだ。だが果たしてこの音はそうした経験から生み出されたのかというと、そうではないと僕は思う。

音楽を聴くのは単純にいって楽しい。だが、時には苦痛に感じるときもある。特に他人のオーディオを聴くときに苦痛と感じることが多い。それがたとえお金のかかった優れたサウンドや、非常にクオリティの高い音でも楽しくないときは苦痛と感じる。なぜといわれても答えはなく、そこがオーディオの難しい部分である。

佐藤氏の今回の音は、技術者がつくりあげた「優れた」というだけの音ではなかった。音楽に対する愛情がひしひしと伝わってきて、そしてそれが十分に僕の心に伝わったというのがすべてだったような気がする。つまり最初に音楽ありきなのだ。とは言っても最初に書いたようにサウンドクオリティは非常に高い。重低音もこのスピーカーから出ているとはとても思えないレベルにある。歌手の音像もリアルサイズだし、でもそれだからじゃない。音楽を楽しく聴かせようという佐藤氏の取り組み方、オーディオ本来の魅力を十分に発揮したシステムでありチューニングであったからだと思う。つくづくオーディオは人だなと思った訪問であった。 2003.8




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